11階のベランダから地上まで一つも遮るものはないから、地下鉄の駅だって鮮明に見える。空の端が赤く染まる頃になると、下校する高校生の声と離散するカラスの鳴き声がないまぜになって聞こえる。誰かが別れる声を聞くと自分まで寂しくなる。

どれだけ幸福の中で酔っていても足を踏み外した拍子にそれは容易く覚めてしまう。そしたらひとりの時間は憂鬱になる。いつしかひとりの時間が、誰かに会うまでの空き時間のようになりつつある。