2024-01-01から1年間の記事一覧

体育の残滓で胸が痛む。昨日あの子に尋ねられたときにはちょっとだけって言ったけれど、どうやら遅れてやってきたみたいで、今朝からずっと疼痛が響いている。 あの子にとっては無数に交わす言葉の中のひとつにすぎないとしても、俺にとってはひとつひとつが…

11階のベランダから地上まで一つも遮るものはないから、地下鉄の駅だって鮮明に見える。空の端が赤く染まる頃になると、下校する高校生の声と離散するカラスの鳴き声がないまぜになって聞こえる。誰かが別れる声を聞くと自分まで寂しくなる。 どれだけ幸福の…

「女は、自分の運命を決するのに、微笑ひとつでたくさんなのだ。」という文章の意味するところが今ならわかる。彼女は傾城の美人で、時代が違えどもこうして誰かの心を揺るがしていたのだろうと思う。 彼女にとって、僕は無数にいる男性の中のひとりに過ぎな…